　【明慧日本2023年6月4日】古人はよく「人の心に思いがあれば、天地がそれを知り、善悪の報いがなければ、天地が私利私欲を持つことになる」という言葉を用いて、「善悪の報いは、影が人に添うように常に伴っているものだ」という道理を、迷いの中で生活している人々に教えていました。実は、善悪は行動や言葉に現れるだけでなく、一つの考え一つの念にもその結果が現れるのです。

善行と美徳は奇跡をもたらす人の心に思いがあれば天地が知っている（パブリックドメイン）

　以下のストーリーはこの道理を証明するものです。引き続き読んで下さい。

　口で言うことと本音が違うことは、神様に最も嫌われることである

　明の時代、沂州出身の儒学者である王用予は、神佛を敬虔に信じ、誠実で素朴な人物です。兪麟と周吉2人とも彼の同級生ですが、外から見ると、兪麟は上品な紳士で、親孝行で、いつも自分を徳の高い紳士と称していました。周吉は受験生の中で最も軟弱で、作文もそれほど優れていなかったのですが、省試の中で解元（第一位）に合格し、皆が驚きました。

　ある日、王用予は夢の中で神仙を見かけ、兪麟の受験の結果について尋ねました。神仙は、兪麟はいつも「心の中で誹謗中傷する」、つまり表面的にはうまく行っているが、心の中では善の念を持っておらず、表面の振る舞いとはかけ離れているので、試験に合格できないのだと告げました。

　神仙はまた、「兪麟は両親の前でもこのように、表向きは一応引き受けるが、内心では無関心であった。また、人のことを辛辣的に言うのが好きで、情理に乏しく、いつも高潔な紳士を装っていた。このような表裏が一致せず、自分の名声を高めようとする人間は、神々にとって最も嫌われる存在であり、罰として科挙試験で上位に入らせなかったのだ」と言いました。

　善行を積み悪事をしない先祖は子孫に恵まれる

　王用予は神仙に、周吉が解元に合格した理由を聞きました。神仙は、「周吉の祖父も父も官吏であったが、法を犯したり、女性を姦淫したりしたことはなかった。周家は三代にわたって一度も他人の欠点を話したことがなく、一度も他人を中傷したことがないのだ」と告げました。

　「周吉の曽祖父も『百忍説』を書いて人々を善へ導いたことで、多くの人が感化された。だから、彼の家族は60年以上にわたって恵みを享受することができる。このような善行をしたことは誰も知らないが、天は細かい点も逃さず見抜くことができ、三代にわたって繁栄する運命にさせ、幸福を与えて下さったのだ。今年、周吉は解元を獲得することができたが、これは福報の始まりにすぎないのだ！」とも言いました。

　王用予が神仙に自分の将来について尋ねると、神仙はこう答えました。「もし、あなたが善良に考え、行動するならば、当然ながら明るい未来が待っている。もし、あなたが邪悪に考え、行動するならば、当然ながら未来は危険である」

　実際はまさにその通りで、王用予は大官になりましたが、兪麟は何の成果もないままでした。実は、運命は神様が決めるものであり、「禍福に門なし、ただ人は自ら招くのみ」と言われています。人間としてひたすら善へ向かうことは当然ですが、偽善者である兪麟のように、表裏が一致しないことは、自分を欺くだけで、どうして神を欺くことができるのでしょうか。

　庶民の李珏が信用商売で功徳を積み、仙人リストに入った

　李珏は唐の時代の米屋の店主で、正直で職務を全うする勤勉な男です。もともと父親が米屋を営んでいましたが、彼が15歳のとき、父親が用事で外出していたため、李珏が店を任されました。田舎の人が米を買いに来ても、都会の人が買いに来ても、李珏は穀物の値段を気にせず、いつも米を量る容器を顧客に渡して、顧客に量らせました。

米を量る容器(パブリックドメイン)

　李珏は穀物を売るたびに、僅か2銭の利益で家族を養っていましたが、自分の衣食住は十分に確保できました。父親は不思議に思い、何か策略を弄しているのではないかと興味本位で聞いてみました。彼は正直に答えてくれました。父親は「普通の米屋では、大きい容器で仕入れをして、小さい容器で売るのだ。俺は仕入れも売るのも同じ容器を使っていたので、それは良いやり方だと言える。だが、お前は俺より偉い。お前はわずかな利益しか取らないが、家族の生活が満ち足りているのだから、神の加護があることは明らかだ」と言いました。

　また、唐の文宗皇帝と武宗皇帝の時代に宰相を務め、その後朝廷に派遣されて淮南節度使を務めた李珏もいました。平民の李珏は、新しい節度使の名前が李珏であることを知り、同姓同名を避けるために李寛と改名しました。

　ある夜、宰相兼節度使の李珏は、花があふれて楼閣が連綿と続く「華陽洞天」にやって来た夢を見ました。楼閣を散策していると、金色の大きな文字で李珏の名前が刻まれた石垣がありました。そのリストはなんと神仙世界に入れる人の名簿でした。

　宰相は、「私はこれまで重要な官職に就き、功績が大きいので、本当に仙人の仲間に入ったのだ！」と思い、大喜びしました。すると、石垣の両側から2人の仙童が出てきて、「この李珏は宰相本人ではなく、あなたが管轄している江陽の一庶民です」と言いました。

　翌日、夢から目覚めた李珏はどうにかして別の李珏を探し始めました。その後ようやく、現在の名前が李寛で以前の名前が李珏である人物を探し当てました。宰相は李珏を馬車で自宅に迎え、修行専用の静かな部屋で休ませ、斎戒と入浴をしてから訪問し、「道兄」と呼びました。また、家族全員に、毎日敬意をもって彼に仕え、敬意を払うようにと指示しました。

　宰相は同名の李珏に仙人になる秘密を尋ねる

　庶民の李珏はすでに70歳を過ぎていましたが、雅やかでさっぱりとしており、白くて可愛らしい髭は1尺以上ありました。彼が宰相に厚遇されたことで、「彼は米屋の店主に過ぎないのに、大したことないじゃないか」、「米屋の経営は大したことはないが、李珏は人間としての人柄は大したものだ」と、地域社会では議論も起こりました。

　1カ月ほど経ってから、宰相は李珏に尋ねました。「道兄にお聞きしたいのですが、あなたは普段どんな道術を煉っていますか?　どんな仙人の薬を飲んでいるのですか？　私はかつて仙人界に行く夢を見たことがあり、あなたが仙人としてランクされているのを見たので、道兄を歓迎し、私に道術を伝授していただきたいのですが」。李珏は「庶民の私は道術を知りませんし、仙人の薬も飲んだことがありません」と答えました。李宰相は何度も懇願したので、李珏は自分がどのように穀物を売ったかを話しました。

　ようやくその理由がわかった李宰相は、感慨深げに「あなたは長年にわたり、顧客に自ら米を量らせてきました。些細なことのように思いがちですが、本当は難しいことです。これは普通の人にはできないことであり、あなたが積み上げてきた徳は比類ないものです！」と話しました。また、この事から次のように悟りました。

　「世の中のすべての動き、すべての物、一つの呼吸までは、天が知っています。功徳を積む限り、たとえごく普通の庶民であっても、神々に見守られ、仙人の世界に入ることができます。これは、神から世間への警告です！」

　当時、人々は「宰相は李珏を師と仰ぐなんて、本当に不思議だ！」と言いました。庶民であった李珏は100歳まで生き、依然として爽やかで健康でした。死後3日目に服を残し、蝉が殻を抜けたように去って行き、本当に神仙になりました。

　結び

　このことから分かるように、神の目には世のすべての人が平等であり、神はただ心の善悪を見て、それをもって良し悪しの区別をなされているのです。宰相であろうと米屋であろうと、これらは決して神様が人間を測る基準にはなりません。したがって、金持ちであろうと貧乏であろうと、善良であるべきで、悪い行いをせず、良い行いをすることで、来世で福報を得られ、高官と幸せがあなたを待っているはずなのです。

　どんなに良いことをしても、嫉妬や不満を持つ人は必ずいるし、正義を貫く人もいる。つまり「寛容で、世の中が許容できることを許容し、よく笑い、世の中のばかばかしい人を笑う」ということです。

　また、どんな普通の仕事や職業でも、心を込めて真剣に行えば、業績を上げることも、奇跡を起こすこともできます。心性の高さが高ければ高いほど、生み出される成果や奇跡は大きくなります。