文／中国の大法弟子

　【明慧日本2025年5月26日】私は基層の郷鎮政府（町村レベルの地方政府）で働いている大法弟子で、修煉を始めてから20年以上になります。今回は、本職において利益の心を取り除いた経験を、皆さんと共有したいと思います。法に沿わないところがありましたら、どうか慈悲をもってご指摘ください。

　私は現在の勤務先で20年以上働いており、以前はずっと農業課に所属していました。5年前、上司の指示で部署を異動し、郷鎮の民政（福祉・民生）事務所で民政の助手として、全郷鎮の民政業務を担当することになりました。以前、郷鎮の民政助手という職は、鎮政府内の数ある部署の中でも「おいしい仕事（うまみのある役職）」と見なされていました。その主な理由は、低保戸（生活保護世帯）や五保戸（高齢者・障害者など扶養者のいない人への保障制度）などの救済資金の審査を担当していたためで、多くの人が贈り物を持って頼みに来ることがあり、常人の観点ではいわゆる「得をしやすい」立場だったからです。

　私がこの仕事を引き継いだ後も、その影響を免れることはできませんでした。中でも最も多く、そして最も頭を悩ませたのは、やはり「贈り物を持ってくる」問題でした。数年前に中国国内で話題になった『潜規則（暗黙のルール）』という本の中で述べられているように、贈り物のやり取りは古くから存在し、古代では「陋規（悪しき慣習）」と呼ばれていました。歴代の王朝はいずれもこの問題を取り締まろうとしてきましたが、贈収賄のような行為は常に隠れた潜在的な形で存在し続けてきました。人々はそれを憎みつつも、どうすることもできず、取り締まっても絶えず、まるで草のように何度抜いてもまた生えてくるような状態でした。役人たちは「うまみのある職務」に群がるように集まり、自分の利益のためにあらゆる手段を尽くし、得をしようとするのです。専制的で独裁的な体制の下では、たとえ民衆がそのやり方を不合理だと感じていても、現実を変えるのは非常に難しいのが実情です。そのため、多くの人々は次第にそれに慣れてしまい、心の中では疑問を抱きながらも、いわゆる「潜規則」を暗黙の了解として受け入れてしまうのです。

　しかし法輪大法の弟子として、この問題にどう向き合うべきでしょうか？　修煉者として、私たちは常人の中の利益を追い求めることはありません。利益の心は、修煉者が取り除くべき執着心の一つです。受け取るべきではない利益を得るということは、徳を失うことにほかなりません。

　師父はこのように説かれています。「失わなければ得られず、得るには失わなければならぬ」（『轉法輪』）

　多くの大法弟子は、修煉者は贈り物を受け取ってはならないことをよく理解しています。常人社会の中でも修煉者としての基準で厳しく自分を律し、常人からも信頼され、称賛されてきました。私自身について言えば、以前の仕事は主に事務的な業務ばかりで、誰かから贈り物を受け取るような機会もなく、そもそも贈り物を受け取るという問題自体が存在しませんでした。しかし、民政助手の職に就いてからは状況が一変し、日常的に贈り物を持ってくる人と向き合うことが多くなったのです。今は末法の時期であり、中国は依然として邪党による一党独裁体制のもとにあります。その支配体制の中では、上から下まで腐敗が蔓延し、清廉な官吏などほとんど見当たりません。民衆はこうした現状に深い憤りと嫌悪感を抱きつつも、多くは怒りを表に出すことすらできず、ただ黙って耐えているのが現実です。多くの人は、この社会の現実を自分の力ではどうにも変えられないと感じ、結局は「余計なことには関わらず、波風を立てずに生きよう」と、自分を守るために流れに従ってしまうのです。

　そのため、低保（生活保護）を申請したいという多くの人が、直接私の家に来たり、知り合いを通じて連絡を取ってきたり、職場に訪ねてきたりしました。そうした中で、多くの人が現金を差し出してきます。少ない場合は4,000円～6,000円（人民元200〜300元）、多いと4万円～6万円（人民元2,000〜3,000元）にもなります。これはまるで暗黙の了解であり、言葉にしなくても、そうした贈り物を受け取れば、それに応じて力を尽くし、その人のために手続きを進めるのです。さらに言えば、現在の低保戸や五保戸に対する給付は、政府が直接、条件なしに資金を支給する制度となっており、一度審査に通れば、長期にその福利を受けられる仕組みになっています。そのため、多くの人は積極的にお金を投資し、　この福利を得ようとするのです。

　私は贈り物を受け取らないと心に決めていましたが、自分の面子の心が強く、相手を傷つけまいとする思いから、はっきりと断ることが難しい場面が多々ありました。中には、無理やりお金を押し付けてすぐに立ち去ってしまう人もいます。こちらが受け取らないと「この人は自分のために動いてくれないのでは」と不安になり、かえって疑念や誤解を持たれることもあります。さらに言えば、低保（生活保護）を常時取り扱っているため、手続きをするのは1人や2人ではなく、1日や2日で終わるわけもなく、毎日のように誰かしらが申請に来て、贈り物を持ってくる人が後を絶ちません。むしろ、贈り物をする人の方が、しない人よりも圧倒的に多いのです。今の社会における常人の価値観からすれば、「人から贈り物をされるなんて、願ってもないありがたいこと」と受け止められています。多くの人が官職に就きたがるのは、結局のところ何のためでしょうか。一つは名声や名誉のため、もう一つは権力を持てば、人が頼み事を持って頭を下げてくるようになり、それに伴って官界の上から下まで、腐敗が蔓延しています。こうした環境の中で「清く正しく、廉潔に」いられるかどうかは、結局その人自身の道徳や人格にかかっています。常人は信仰を持たないことが多く、利益を目の前にすると心が動きやすく、欲望に負けてしまうのが現実です。そのため、現代社会では腐敗が蔓延し、賄賂が当たり前のように横行する風潮が形成されてしまっています。

　常人社会の中で、贈り物を受け取らず、貪らず、占め取らず、すべてを門前払いにするのは、今の社会では本当に難しいことです。皆が当たり前のように贈り物を受け取り、それを当然と思っている中で、ただ1人それを拒み、逆境に立ち向かうのは簡単なことではありません。時には私も考えます。人のために動き、自分もそれなりに労力を払っています。普段から仕事量も多く、給料も高くはありません。多く働けば多く得るのが当然で、数千円の「手数料」をもらうのも普通ではないのか？　レストランの店員さえチップを受け取りますよね？　またこう考えました。「私は修煉のために迫害を受け、昇進や昇給の機会を失い、これはまさに補償ではないか？　自然の流れに任せ、貰ってもいいと思う。それに、相手も誠意を込めて差し出してきたもので、私が要求したわけでもない」とさまざまな人心や考えが湧いてきて、自分の貪りの心に理由や言い訳をつけ始めるのです。

　常人の悪に染まりやすい環境の中で、身を清く保つのは本当に難しいことです。もし大法を修煉していなければ、私もきっと流されるままになって、特におかしいとも感じなかったと思います。しかし、大法弟子として、本性の一面では、修煉者は贈り物を受け取ってはならないということをすぐに認識できます。利益への執着を取り除かなければならないのです。そして私たちが修煉する目的は、返本帰真であり、常人の名利を求めることではありません。利益への執着や貪欲さこそ、私たち修煉者が取り除くべきものなのです。

　ある時、私は人から贈り物を受け取ってしまい、心がずっと落ち着かず、胸がつかえているような感覚でした。受け取ってもいけないし、断ってもいけないような気がして、内心では矛盾して、葛藤していました。正しい考えと人心が絶えずせめぎ合い、心の中で何度も何度もひっくり返っていました。時には腹立たしくり、自分は別に贈り物なんて欲しくないし、得をしたいとも思っていません。この仕事は、やりたい人がやればいいじゃないか」と思うこともありました。「民政の仕事を人にやらせてください。私はもうやりたくありません。やりたい人がいるなら、明日にも席を空けます」と私は町長に言いました。しかし、町長は私をとても信頼していて、「この仕事はあなたがやってくれると安心だ、あなたが言うことには何の異論もない」とまで言ってくれました。そこまで信頼してくれているのは、やはり私が大法弟子であり、自分を律することができて、簡単には問題を起こさないと信じているからなのでしょう。

　たしかに、常人と比べて、私たち大法弟子がこの仕事をすることで、名利を求めず、賄賂を受け取らず、正しく清廉で、着実に人のために多くの事を行い、庶民の負担を軽減することができるのです。これも良いことではないでしょうか？　これも自分の修煉に対する試練でしょうか。私が1日働けば、人々はその1日の恩恵を受けられます。たとえ私たちの行いが常人の流れに逆らうものであっても、常人はその違いに気づくでしょう。たとえ私たちの力だけで、この社会の風潮や流れを変えることができなくても、人には本来、善良な一面があります。私たちの正しい行いは一筋の清らかな流れのように、世の人々に「真・善・忍」を修煉する者の素晴らしさと善良さを見せることができ、この社会にもまだ未来と希望があると感じさせるのです。

　大法弟子として、物事を法理の上から認識する必要があります。私たちの使命は、大法の中で自らをしっかり修めることによって、衆生を救い済度することにあります。修煉者は執着を捨ててこそ円満に至ることができ、常人の名誉や利益は私たちの求めるものではありません。私たちは常人社会の中で修煉しており、その一言一行がすべて大法のイメージを代表しています。私たちの行いが正しければ、常人は私たちを通して大法の素晴らしさを感じ取ることができるのです。もし私たちの行いが良くなければ、たとえ大法は素晴らしいと人に伝えても、相手はあなたの行いが常人と変わらず、常人よりも劣っていれば、どうして大法が素晴らしいと信じられるのかと言うかもしれません。法理から認識すれば、どう行動すべきか分かります。私たちは常人と同じように流されるのではなく、修煉者としてすべきでないことは決して行ってはなりません。さらに、私たちの正しい言行は、常人が大法を理解するための貴重な機会でもあります。その機会を通じて真相を伝え、「三退」（中共の党・団・隊からの脱退）を勧め、世の人々を救い済度することができるのです。

　思想が通じ理解できれば、問題は自然と解決します。そこで私は、これまでの数年間を振り返り、誰から贈り物を受け取ったのかを思い起こし始めました。どんな理由であれ、人のために何かをして、その見返りとしてお金を受け取ってはいけないのです。私は彼らの口座番号を探し出し、2日かけて一人ひとりに振り込みで返金しました。ざっと見積もっておよそ100人に、合計で約140万円(7万人民元)を返しました。連絡が取れた人には、自分は煉功者なので、贈り物は受け取れません。そのため返金しましたと伝えました。あるがんを患っている家庭に、どうしても私に感謝したいと渡してきた2万円を返金したところ、その人はとても感動しました。

　私は思います。大法弟子の正しい行いそのものが、最も力強い真相を伝える手段です。常人は私たちの行いを通して、心から法輪大法は素晴らしいと理解することができるのです。人は皆、救われるためにこの世に生まれてきたのです。私たちはその人々を救うために来たのであって、この来世における根本の使命を決して忘れてはなりません。返金する間、私はまったく心が動じませんでした。すべてを返し終えた後は、まるで肩の荷が下りたように感じ、心の中の重い石がストンと地に落ちたようで、本当に身も心も軽くなったのです。もし常人であれば、俗に言うと体が切られると痛い以外、お金を出すことは一番心が痛いと言うように、自ら進んでお金を手放すのは、きっと嫌がり、なかなか割り切れないことでしょう。でも、これまで長年にわたって修煉を積んできたおかげで、私は今、常人の利益を平然と手放せるようになったと感じています。

　過去のことには区切りがつきました。そしてこれからどうすべきかも、私ははっきり分かっています。まずは贈り物を受け取りません。次に、たとえ私の意思に反して受け取ったとしても、最終的に用事が済んだ後には必ず返します。そうしたものは要りません。同時に、これこそ真相を伝える絶好の機会ではないでしょうか？　まさにこの機会を借りて、大法の素晴らしさを語り、「三退」を勧め、世の人を救い済度することができるのです。

　正法の最後の多くない時間の中で、私は師父が示してくださった道をしっかりと歩み、大法の基準に従って自分を律し、正念正行で修煉の道を正しく歩んでいきます。利益への執着を手放し、より多くの縁のある人々を全力で救い済度し、この使命に背かず、円満して師と共に帰ることを目指します。