　【明慧日本2025年6月9日】（米国＝明慧記者・李静菲）アメリカ連邦議会下院の外交委員会ブリーフィングルームで6月6日午後、「中共によるエスカレートする越境弾圧」をテーマとしたシンポジウムが開催された。政界関係者、中国問題の専門家、弁護士らが出席し、中国共産党（以下、中共）がアメリカ国内で繰り広げる「世論戦」および「法律戦」（他国の法律を利用して相手を陥れ、国際的な支持を獲得すること）を利用して、法輪功（ファールンゴン）と神韻（シェンユン）芸術団を標的にした弾圧行為について討論された。

　アメリカ連邦議会上院・下院の外交関連担当者や報道関係者などが、このシンポジウムに出席した。複数の登壇者は発言の中で、中共がアメリカ国内で行っているテロ行為を阻止し、米国の国家安全保障を脅かす行動に対して責任を追及すべきだと強調した。

6月6日午後、下院外交委員会のブリーフィングルームにて開催された、「中共によるエスカレートする越境弾圧」をテーマとしたシンポジウム会場の様子

　元北京大学法学教授「中共は『世論戦』と『法律戦』を仕掛け、アメリカの国家安全を脅かしている」

　元北京大学法律学部訴訟法研究室主任であり、法学教授でもある袁紅冰氏は、ビデオ通話の形式でシンポジウムに参加し、米国の政府関係者や専門家からの質問に応答した。袁教授はシンポジウムにおいて、中共体制内の良心ある人物から寄せられた内部情報を明らかにした。

「中共によるエスカレートする越境弾圧」をテーマとしたシンポジウムで、米国の政府関係者や専門家からの質問に応答する袁紅冰教授（テレビ画面）

　袁教授は中共の法輪功迫害の戦略を次のように明らかにしている。「2022年の中共の第20回全国代表大会に先立って開催された中共中央政法委の拡大会議において、習近平は、海外での法輪功の発展に対し、新たな弾圧・迫害の大戦略を実施するよう提起しました。中共体制内の良心ある人物からの情報によれば、この戦略は『一つの中心、二つの基本点』に要約されます」

　「一つの中心』とは、法輪功の創始者に対する人格の抹殺、道徳的な破壊、そして名誉の毀損を狙うものです。習近平の言葉を借りれば、『法輪功に対して精神的な斬首作戦を行い、法輪功の存在基盤を破壊する』ことを意味します」

　「『二つの基本点』とは、法輪功に対する『世論戦』と『法律戦』です。いわゆる『世論戦』とは、西側の自由民主国家の主流メディアを利用して、デマや中傷、虚偽の情報を用いながら法輪功を全面的に攻撃し、国際社会におけるその影響力を弱めることを目的としています。また、特定の人物を使って、法輪功学習者が設立したメディアに偽情報を流し、その報道機関の信用を失墜させることも狙っています」

　「中共の暴政が西側諸国の主流メディアに対して行っている浸透の主な手段は、人間の弱さや貪欲さにつけ込むことです。金銭、色仕掛け、あるいは経済的・政治的利益などの誘惑を通じて、いわゆる主流メディアに対し、中共の代理人や代弁者が執筆した法輪功を攻撃・中傷する記事を掲載させています」

　「いわゆる『法律戦』とは、西側の司法制度を利用し、法輪功の創始者、神韻芸術団、そして法輪功学習者が設立した文化団体やメディアに対して、悪意に満ちた訴訟を起こすことです。虚偽の告発や嘘を用いた、いわば『嫌がらせ訴訟（スラップ訴訟）』を展開し、その過程を通じて法輪功の名誉を傷つけ、道徳的なイメージを破壊しようとします。また、訴訟の手続きを意図的に引き延ばすことで、訴えられた側の時間・精力・資金を消耗させることも狙いの一つです」

　「要するに、『世論戦』と『法律戦』のいずれにおいても、中共の暴政はアメリカに対して統一戦線工作による浸透を図り、アメリカの主流メディアや司法制度を利用して、法輪功に対するさらなる迫害と攻撃を実現しようとする戦略的陰謀を示しています」

　袁教授は、中共が現在、海外において法輪功への迫害を主に国家安全部（いわゆる中国の情報機関）によって統一的に組織・調整していると指摘した。現在中共が展開している「世論戦」と「法律戦」は、まさに国家安全部部長・陳一新の言葉に基づいて実行されているという。陳一新はこのように話している。「西側諸国のいわゆる自由・民主・法治を利用して、法輪功を打撃・制裁しなければならない。これこそが我々（中共）の最上の戦略だ」

　袁教授はさらに次のように述べた。「中共の暴政がアメリカ国内で法輪功に対して展開している『世論戦』と『法律戦』から見て取れるのは、中共の統一戦線工作による浸透が、すでにアメリカの国家利益に対する重大な脅威となっているという事実です」

　中国問題に関する連邦議会・行政府委員会の幕僚長　「責任を追及しなければならない」

　中国問題に関する連邦議会・行政府委員会（CECC）の幕僚長ピエロ・トッツィ氏は、シンポジウムで次のように述べている。「長年にわたり、中共の公然たる越境的弾圧活動に注目してきました。暴力的手段の使用も含まれており、その行為は現在も継続しています。中共政権による中国国外での弾圧はますます激化しており、アメリカ本土においても同様の状況が見られます。特に法輪功修煉者や民主主義の擁護者が標的となり続けています」

シンポジウムで発言する、中国問題に関する連邦議会・行政府委員会（CECC）の幕僚長ピエロ・トッツィ氏

　「神韻芸術団は『共産主義以前の中国を再現する』という使命と、中国の伝統文化を復興させるという崇高な使命を担っています。彼らは宗教信仰に対する敬虔な姿勢を持ち、また平和的な法輪功学習者に対する中共の歴史的で残酷な弾圧を舞台で表現しているため、中共政権から絶えず厳しい弾圧を受けてきました」

　「世界各地で開催されている神韻芸術団の公演も、中共の攻撃の標的となっています。2006年に神韻芸術団が設立されて以来、中共はこれまでに数百回にわたり、神韻の公演会場やスポンサーに対して脅迫を行い、さらには神韻の出演者や彼らの中国にいる家族にまで圧力をかけてきました」

　「近年、このような脅迫はますます増加しており、ここワシントンD.C.でも実際に発生しています。今年の神韻公演の前には、ケネディ・センターに爆弾の脅迫電話がかかってきました。そのほか、今年の初めにも、神韻の出演者だけでなく、法輪功学習者や法輪功を支持する連邦議員にまで及ぶ、大量の爆弾および殺害予告が突然寄せられました」

　トッツィ氏は発言の中で、アメリカ司法省が2024年に中共の代理人を起訴した事件についても言及した。

　法輪功への迫害運動の一環として、陳軍と林峰という人物は、中共政府が指揮する計画に関与し、アメリカ国税庁の内部告発者プログラムを悪用して、法輪功学習者が運営する神韻芸術団の非課税資格を剥奪しようとした。陳軍には1年8カ月の実刑判決が下され、共犯の林峰には1年4カ月の実刑判決が言い渡された。さらに、陳軍には3年間の保護観察と5万ドルの罰金も科された。

　李平という人物は、アメリカ司法長官に通知することなく中共の代理人として活動することを共謀した罪で起訴された。罪状の一つは、地元の法輪功学習者の個人情報を中国の国家安全部に提供したことである。李平には懲役4年、25万ドルの罰金、さらに3年間の保護観察が言い渡された。

　トッツィ氏はこのように述べた。「私は、中共の弾圧的な政権によって世界中で被害を受けている人々に正義をもたらすこれらの取り組みに強く賛同します。しかし、さらなる嫌がらせや暴力を防ぐためには、まだ多くの課題が残されています。私はこれまでに上院の同僚たちと共に『越境弾圧対策法案』を提出しました」

　「責任を追及しなければなりません。遅れている正義は正義ではないのです」

　法輪大法情報センター研究員マーク・ヤン氏「中共による越境弾圧の手段が徐々に展開されているのを目の当たりにしている」

　法輪大法情報センターの研究員マーク・ヤン氏は、シンポジウムで次のように述べている。「袁紅氷教授が先ほど述べたように、私たちが現在目にしているエスカレートな弾圧は、中共による上からの指令によるものです。流出した情報によれば、習近平自らが法輪功学習者に対して『世論戦』と『法律戦』を展開するよう命じたことが示されています。私たちは、これらの手段が徐々に実行に移されているのを目の当たりにしているのです」

シンポジウムで中共による神韻公演への妨害事件について説明する、法輪大法情報センターの研究員マーク・ヤン氏

　マーク・ヤン氏はこう述べた。「2006年から2024年にかけて、法輪大法情報センターは神韻公演に対する130件以上の妨害事件を記録しています。これには、サイバー攻撃、車のタイヤを切られるといった破壊行為、さらには中共の領事館や大使館を通じて劇場に圧力をかけ、公演を中止させようとする行為などが含まれます」

　「しかし、2024年以降、こうした行為の規模、深刻さ、そして複雑さが急激にエスカレートしていることが見受けられます。2024年から2025年5月までのわずか1年余りの間に、法輪大法情報センターは世界中で110件を超える同様の事件を記録しており、その多くがアメリカに集中しています。その中には、神韻公演の劇場に対する爆破予告や大規模な銃撃の脅迫が多数含まれています。ニューヨーク州北部にある神韻の本部にも、放火、強姦、大規模銃撃、交通事故を予告する脅迫が届いています」

　「これらのテロ行為による脅迫に加えて、私たちは中共の手口がますます巧妙になってきていることにも注目しています。2024年8月以降、『ニューヨーク・タイムズ』は神韻に対する否定的な報道を12本掲載しており、それらの記事には歪曲された情報、不正確な内容、そして誤解を招く表現が多く含まれています」

　「神韻の出演者および800人以上の家族は陳情書に署名し、『ニューヨーク・タイムズ』の報道が彼らの仕事、信仰、そして生活様式を著しく歪めていると非難した」

　中国問題の専門家「中共のイデオロギーと邪悪な行為を終わらせる」

　人権法律基金会の事務局長であるテリー・マーシュ博士は、シンポジウムにおいて、中国国内で行われている粛清運動と、アメリカの法律のもとで法輪功などの団体に対して行われているテロ行為について概説した。

シンポジウムで発言する人権法律基金会の事務局長テリー・マーシュ博士

　アメリカの首都ワシントンにある「共産主義犠牲者記念財団（VOC）」の会長エリック・パターソン氏は、シンポジウムにおいて中共による越境弾圧の具体的な事例をいくつか紹介した。

　パターソン氏は「私たちが今日議論している問題について考えるとき、中共のこの全体主義的なイデオロギーと邪悪な行為を終わらせたいと強く願っています」と述べた。