文／中国の大法弟子

　【明慧日本2025年6月18日】修煉においては、小さなことなどありません。何かが起きたとき、それは偶然ではなく、必ず乗り越えるべき執着があり、変えるべき観念があり、そして深く根を張った「気づいていない自我」があるのです。それはすでに、自らの段階を高めるべき時に来ているという意味なのです。

　週末、いつものように夫とともに兄の家に出かけ、家族で集まることになりました。兄の妻（義姉）は遠方で子どもの世話をしていたため、私が食事を担当しました。昼前に食材を買いに出かけ、肉や野菜を山ほど買い込み、帰宅後にひたすら洗い、切り、盛り付け、十数種類の具材を整然と並べて、兄の帰りを待っていました。火を起こせば、火鍋の準備も整うという段取りでした。

　夜6時半を回ってようやく兄が帰宅し、開口一番、「なんでまだお湯が沸いてないんだ」と言われました。私は「そんなに急がなくても」と軽く受け流そうとしたのですが、兄は「もうこんな時間だぞ、腹が減ってるんだよ」と不機嫌な様子。私は慌てて鍋に水を入れて火にかけつつ、「何時に帰ってくるか分からなかったのに、そんな言い方はないでしょう」と言い返してしまいました。帰ってくるなり険しい顔で文句を言われたことに、心の中では不満が湧きましたが、なんとか口には出さずに我慢しました。ところが、食事中も兄はあれこれ文句を言い続け、ついに私も耐えきれず、「もういい、あなたたちで好きに食べて。私はもういらないから」と席を立ちました。すると兄は「食べたくないなら食べなければいい」と突き放し、そのまま私は食卓を離れました。その後、皆の箸も進まず、結局気まずい空気のまま解散となってしまいました。

　帰りの車の中、私はどうしても納得がいかず、心の中でずっと考えていました。50キロ以上も往復して、わざわざ食材を買い揃え、丁寧に調理までして、兄のためにここまでしたのは、ただ兄弟で集まって楽しい時間を過ごしてほしかったからです。うちは多少の余裕もあり、時間もあるからこそ、手間をかけて食事を用意しました。外食ばかりで健康が心配な兄のために、週に一度はまともな食事を、と心から思ってのことでした。それなのに、感謝どころか、まるでこちらが何か借りでもしているかのような態度に、強い失望を覚えました。今日の兄はいったいどうしてしまったのか。普段はこんなことはなく、私にもとても優しかったのに……。

　家に戻っても気持ちは晴れず、私は夫につい不満をぶつけてしまいました。今日の出来事について「ああすべきじゃなかった」、「こう言うべきだった」と夫に言い募ると、夫は静かに、しかし毅然とした口調で私に「怒らないで聞いてほしい。僕は法を得てまだ日が浅いけれど、今は同修として君と向き合っているからこそ、どうしても伝えたいと思う。君が何に対して腹を立てたのかは関係ない。どんな理由があったにせよ、心を乱して不機嫌になるのは正しくない。君の様子がおかしくなると、僕もすぐに感じ取って自分の心も揺れて、不快になってしまう。だから、正すべきなのは君自身なんだ。僕のせいにするのではなく、自分の中を見つめるべきだと思う」と言いました。。

　夫の言葉は、まるで重い鉄槌で頭を打たれたかのように、私の目を覚まさせました。私はすぐに心を静め、自分の内面を探ることにしました。

　第一に、これまで兄が私に対してこんな態度を取ったことは一度もありませんでした。突然こうなったのは、私の向上を助けてくれているのではないでしょうか。しかし、私はそれに気づかず、不機嫌になってしまいました。これはまたしても関門を乗り越えられなかった証拠ではないかと反省しました。師父は、「実は、本人自身はそうとは知りませんが、あなたの業の消去に手を貸してくれたのです。相手は表向きあなたと喧嘩しているような振りをして、内心ではあなたを思いやっているというわけではありません。本当に心から腹が立っていたのです。なぜなら業力が誰かのところに落ちていれば、その人は必ず辛い思いをするからです。これは間違いないところです」（『轉法輪』）といわれました。そうなのです。業力が誰に降りかかるかによって、その人が苦しむのです。私は兄に感謝すべきなのです。

　第二に、なぜ私はそのことに気づけなかったのでしょうか。これこそが、長年かけて身についてしまった癖なのだと思います。いつも自分のやり方が正しいと思い込み、他人もそれに従って当然だと考えてしまっていました。これでは、自分中心の考え方にほかなりません。

　一度観念が形成されると、人は物事を考えるときも、行動するときも、常に自分の固定観念に基づいて判断し、それを他人にも求めてしまいます。私と夫の間に起きる多くの衝突も、この固定観念と「善」でない思考から来ていたのだと気づきました。しかし、修煉をしている私たちは、もう常人の習慣的な考え方に執着してはいけません。すべてを「真・善・忍」の基準で測らなければならないのです。

　人間に完璧な者はいません。私もまた修煉の道を歩む一人の人間であり、至らぬ点や未熟な面があるのは当然です。だからこそ、自分をより一層修め、高めていかなければならないのです。他人の欠点ばかりを見てはいけません。むしろ、他人の良いところに目を向けるべきです。私は修煉者として、常に思想の境地を高めていくべきです。だからこそ、人と接する際の距離感や方法をしっかりと見極めなければなりません。常人は修煉していないのですから、自分の高めた境地で彼らを評価したり、要求したりすることはできません。

　今回、もし夫が核心を突いた指摘をしてくれなかったら、私は自分の問題として真剣に受け止めなかったかもしれません。長年の思考の癖は、あまりにも普通のことのように感じてしまい、気づくことすらなかったのです。

　この体験を通して、私は同修の皆さんに強くお伝えしたいことがあります。それは、必ず「集団での学法の環境」を形成することです。たとえ集団学法が難しい状況であっても、定期的に同修との交流を持つべきです。というのも、自分自身では気づけない問題や、深く隠れていて、分析が及ばないようなことがあるからです。それをどうやって悟るのでしょうか？　気づくことはとても難しいのです。もし長いあいだ同じ段階にとどまってしまえば、難関や試練はますます困難なものとなってしまうのです。